《英名》 eel 《中国名》 鰻魚(マンユィ)
ウナギ目ウナギ科の魚です。ニホンウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギを除くとほとんどは熱帯域に生息しています。ウナギは、産卵のために川をのぼるサケなどの「遡河回遊魚」とは反対で、通常は河川・湖に暮らし、産卵のために川を下る「降河回遊魚」です。ただし、海で生まれ川をさかのぼる「川ウナギ」のほかにも、川をのぼらず河口にとどまる「河口ウナギ」、成長しても海に暮らし続ける「海ウナギ」も存在し、海ウナギはメスが多く、川ウナギはオスが多いそうです。
ヨーロッパでも大昔から広範囲にわたってウナギが食べられていました。フランスの旧石器時代の遺跡やイギリスのケルト人遺跡からウナギの骨が発見されています。紀元前5世紀のギリシアの歴史家ヘロドトスは、エジプトのナイル川流域ではウナギが神として崇められていると記録しています。紀元前4世紀後半にガストロノミーを確立したシチリア人、アルケストラトスはウナギを「料理の王」と称しました。医学の祖、ヒポクラテスはウナギの食べすぎに注意せよと書いています。それだけ地中海文明では昔からウナギが好んで食べられていたわけです。ただし、もちろん現在、最もウナギを食べているのは日本人です。
ウナギ
《学名》 Anguilla japonica 《英名》 Japanese eel
北海道から朝鮮半島、台湾、中国大陸の河川、湖沼、沿岸域に生息します。昔はムナギと呼ばれましたが、これは胸びれの部分が黄色いので「胸黄」から来たという説と、姿形が似ている「棟木」から来たという説があります。
昔から食べられており、万葉集で大伴家持は次のように詠っています。
石麻呂にわれもの申す夏痩せに よしというものぞむなぎとりめせ
これにより、平安時代からうなぎが夏バテの特効薬であったことがわかります。
ウナギの生態についてはまだ不明点が多く、産卵場所がグアム島沖スルガ海山近辺だとほぼ特定されたのも2006年2月のことです(東大海洋研究所の塚本勝巳教授による)。
[名産地]
京都の宇治川は昔から天然ウナギの名産地で、「宇治丸」と呼ばれた鰻ずしやごぼうを巻いた「八幡巻き」はこの地方の特産品でした。「宇治丸」は京都吉田神社の神職、鈴鹿家の記録『鈴鹿家記』に登場します。
利根川や四万十川も天然ウナギの名産地です。
[旬]
ウナギの産卵期は10月から4月と言われおり、産卵のために海に下る秋〜冬の天然ウナギは脂肪がのって美味しいというのが定説です。
とはいえ、市場に出回るのはほとんどが養殖もののため、旬はありません。
[料理]
縄文遺跡からウナギの骨が出土していることから、ウナギは大昔から食べられていたようです。ただし、調理法についての記録はなく、最初に文献に現れたのは、1400年頃の
『鈴鹿家記』に出てくる「宇治丸」―ウナギ鮨です。その後、『大草家料理書』などに、蒲焼やなます、刺身、杉焼きその他ノウナギ料理が紹介されています。なますは湯がいて酢漬けにしたもので、刺身は白焼きにして青酢に浸して食べていました。
現在は、蒲焼き、白焼き、八幡巻き、鰻巻き玉子、鰻豆腐(柳川)、自慢煮、てんぷらなど。肝は吸い物や肝焼き、粕漬け、佃煮にされ、中骨はから揚げや煎餅にします。
蒲焼きの調理方法は関東と関西で異なり、関東では背開きして白焼きにしたあといったん蒸してからタレをつけて焼きます。関西では腹を開いてそのままタレをつけて焼きます。
なお、ウナギは血液にイクシオトキシンと呼ばれる毒素を含んでいるため、生食できません。
[栄養]
疲労回復に効くビタミンB1や目に良いビタミンA、ビタミンEを多く含んでいます。DHA/IPAもコラーゲンの含有量も豊富。
[PR]

ヨーロッパウナギ
《学名》 Anguilla anguilla 《英名》 eel ※シラスウナギはelver
アリストテレスは、ウナギの生殖器官が判りにくいことから、ウナギは交尾によって生まれるのではなく、泥の中で自然発生する「大地のはらわた」――ミミズから生じるのだ、という説を唱えました。その後も、13世紀の自然科学者アルベルトゥス・マグヌスはウナギ胎生説を主張し、顕微鏡で精子を発見したことで有名な17世紀オランダの学者レーウェンフックも、ウナギの浮き袋にすむ寄生虫をウナギの「胎児」と勘違いしました。
18世紀後半になってイタリアの医師カルロ・モンディーニがヨーロッパで初めてウナギの雌の卵巣を突き止めました。オスの精巣が確定されたのはさらに遅く、後に精神分析の祖として知られるジグムント・フロイトもウナギの精巣の位置を研究テーマとして論文を書きましたが証拠を示せず、実証されたのは1880年、ポーランドの生物学者シモン・シルスキーの功績によります。
それでも産卵場所が特定されるにはさらに時間がかかり、結局1922年にやっと、デンマークのヨハンネス・シュミットが北大西洋西部のバミューダ海域に近いサルガッソー海であることを突き止めました。サルガッソーとはポルトガル語で海藻のホンダワラを意味し、実際にホンダワラが広範囲にわたって覆い尽くす海域です。彼は1903年から始まった北欧各国による共同調査に翌年から参加し、10年かけて初めてサルガッソー海で17ミリの幼生を発見。第1次世界大戦を経て1922年にバミューダ諸島の南でさらに小さいレプトセファルス(幼生)を数匹見つけ、その後、幼生から稚魚に変わる過程の各段階を写真撮影することに成功しました。
以上、参考文献は 『ウナギのふしぎ―驚き!世界の鰻食文化 』
[主産地]
・スペイン・バスク地方のサンセバスチアン近郊(シラスウナギ――アングーラス――が名物料理) シラスウナギ漁のシーズンはクリスマス前。
・イギリス領・北アイルランドのネイ湖。漁期は初夏〜晩秋。
[料理・加工品]
ウナギの煮こごり
はらわたを除去して塩茹でにし、ゼラチン液をかけて氷で冷やし、ゼリー状に固めたもの。イギリスの労働者階級が好んで食べた庶民的な料理。
ウナギパイ
13世紀の中ごろからフランスのパリで食べられていました。皮を剥いてはらわたを除去したウナギを水洗いしてぶつ切りにし、塩胡椒ほか香辛料を加えて調味します。パイ生地を薄く延ばして大皿に載せ、バターを塗った上にそのウナギのぶつ切りをのせ、白ワインを振りかけてパイ生地で蓋をしてオーブンで焼きます。
ウナギのマトロート(赤ワイン煮込み)
はらわたを除去し、皮をむいてぶつ切りにしたウナギを鍋に入れ、赤ワインと水、塩、ニンニク、ブーケガルニでじっくりと煮込みます。それをカリカリに揚げた薄切りパンの上に載せるなどして食べます。
ウナギの燻製
ウナギを皮付きまるごと、塩水に一晩漬けたあとよく乾燥させます。それをドラム缶のなかに金串で吊るし、オーク材やぶなのかんな屑を燃やした上で40分〜50分ほど燻します。食べ方は皮を剥いてそのまま噛り付くか、パンに挟んで食べるか、あるいは小さく切ってオードブルにします。
アングーラス(ウナギの稚魚)
スペイン北部のバスク地方では、クリスマスイブにアングーラスを食べるのが慣わしになっています。つくり方はいたって簡単、土鍋のなかでオリーブオイルを熱し、10センチほどのウナギの稚魚とスライスしたニンニクを入れ、塩で味をつけます。イタリアのピサやフランス・ロワール川流域などでも食べられています。
ウナギのパプリカ煮込み(アリ・ペブレ)
スペインのバレンシア料理で、ぶつ切りにしたウナギの身をニンニクやパプリカ、スライスしたポテト、オリーブオイルとともに土鍋で煮込んだ料理です。
アメリカウナギ
《学名》 Anguilla rostrata 《英名》 eel
《主産地》
アメリカ・ノースカロライナ州のパムリコ湾など。
ウナギについてもっと知るための本
本項の参考文献は以下の通り。
『ウナギのふしぎ―驚き!世界の鰻食文化 』
『古代ローマの調理ノート
| ウナギのふしぎ―驚き!世界の鰻食文化 リチャード シュヴァイド Richard Schweid 梶山 あゆみ by G-Tools |
ほかにも次のようなウナギ関係の本があります。
|
|
||||
|
|