鰯(いわし)

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 イワシとは一般にマイワシやウルメイワシ、カタクチイワシ(アンチョビー)などを指しており、分類学に沿って厳密に定義されているわけではありません。

 なお、「イワシの頭も信心から」ということわざがありますが、これは昔、節分にイワシの頭をヒイラギの小枝に刺して火にかざしたものを家の門や戸口に飾って「魔よけ」にした風習に由来します。ヒイラギの棘やイワシの臭みが邪気を寄せ付けないと考えたことによります。


マイワシ(真鰯)
《学名》 Sardinops melanostictus  《英名》 Japanese sardine, Japanese pilchard
《中国名》 沙丁魚(シャーディンユィ) 鰮魚(ウェンユィ)

 ニシン目ニシン科に属し、側面に黒点が7つかそれ以上あるのが特徴で、東北では「ななつぼし」とよばれることもあります。この黒点が明瞭であるほど新鮮だと言われています。体長は大きなもので20cmを超え、日本では沖縄・八重山諸島を除く各地域の沿岸域に生息しています。エサはプランクトンで11月から6月にかけて産卵します。日本近海のマイワシには4系統あって、そのうち九州系のものには油脂分が少なく太平洋系は豊富に含んでいます。ときには15から30%もの脂を含むこともあり、かつては行灯の灯油にいわし油が使われました。

[栄養]
 イワシはDHA、IPAといった身体によい不飽和脂肪酸を含むだけでなく、幼い細胞が紫外線や有害物質で癌化するのを防止するといわれるセレンを含んでいます。イワシ100gにつき1日に必要なセレン50マイクログラムほどが含まれますが、吸収率はわずか5%、この吸収量をupするためには、梅干と植物油を加えて煮ると良いと言われています。(TBS『おもいっきりテレビ』より)

[旬] 9月〜10月

[俳句]
海荒れて膳に上がるは鰯かな 高浜虚子

[料理]
 新鮮なものは刺身や鮨だね、マリネ。普通は塩焼き、蒲焼き、フライなどにされます。

いわしの煮付け
 いわしは煮るととても生臭いため、生姜や梅干を一緒に煮るのが一般的です。

つみれ
 骨ごと叩いて団子状にしたものでおでんや吸い物に入れます。

いわしのこんか漬け
 富山の郷土料理。いわし漁で名高い氷見、魚津などで塩漬けのいわしを再度、米ぬかと赤唐辛子で漬けなおしたものです。これをうすぎりにして酢をかけたり、炙ったりして食べます。

いわしのおからずし
 富山湾沿岸から能登半島にかけてつくられる冬場の人気料理です。いわしを腹開きしてはらわたを除去し、塩で締めて甘酢にひたしておきます。いっぽう炒めたにんじんやきくらげを合わせ酢及びだし汁とともにおからに混ぜて炒り煮します。このおからを握っていわしで包むようにまきつけたのがおからずしで、吹雪ずしとも呼ばれます。
  島根県の浜田市周辺でも、いわしのおからずしが作られていますが、これは「おまんずし」と呼ばれています。1750年代に江戸の日本橋で長兵衛という男がおからずしを始め、美人で有名な妻の名前にちなんで「おまんずし」という名で売ったところ、大成功を収めましたので、おまんずしはその後、オカラずしの代名詞になったそうです。

くさりずし(いわしのなれずし)
 九十九里浜の正月料理で、日常食にもなっている名なまなれずしです。アジやサバが使われることもあります。背開きをしてはらわたを取ったいわしを塩に漬けて一晩ほど置きます。刻み生姜を混ぜたすしめしをいわしの腹につめてゆずの葉を敷いて重石を置くと、2週間ほどでくさりずしができます。いわしを塩で締めて酢につけたものを使うと短期間に醗酵するので、これは「早ずし」と呼ばれます。

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[加工品]
・みりん干し、丸干し、練り製品の原材料に使われます。
・稚魚のシラスは釜揚げやしらす干し、タタミイワシなどにされます。

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ウルメイワシ(潤目鰯)
《学名》 Etrumeus teres   《英名》 big-eye sardine

 ニシン目ニシン科ウルメイワシ亜科に分類される魚です。名前は大きな眼が透明な脂肪の膜――脂瞼(しけん)――で覆われていて潤んで見えることに由来します。全長20cmほどで体が丸っぽく、日本では東北地方以南の暖かい海に生息します。マイワシと同じく動物性プランクトンをエサとし、10月〜6月に産卵します。

[旬] 5月〜8月

[俳句]
火の色の透(とほ)りそめたる潤目かな 日野草城

[料理]
 鮮度が落ちるのが極めて早いため、刺身にされることはあまりありません。ふつう塩焼きやフライ、煮つけなどにされます。

[加工品]
 イワシ類としては脂肪が少ないので干物に向いており、味はイワシの干物のなかで最も美味です。


カタクチイワシ(片口鰯)
《学名》Engraulis japonica 《英名》japanese anchovy

 ニシン目カタクチイワシ科に分類される魚で、イワシ類の中では小型です。名前の由来は吻が大きく突き出ている一方で下顎が極端に短いため「片口」に見えることから。昔は「ひしこ」と呼ばれていました。体長12〜15cmほどで動物プランクトンを主食とし、春から秋にかけて産卵します。 別名セグロイワシ

[料理]
どろめ
 高知県の赤岡町香南市の赤岡海岸では、毎年ほぼ4月の最終日曜日に酒豪を競う「どろめ祭り」が開かれます。このとき酒の肴として供されるのがカタクチイワシの稚魚の「どろめ」。にんにくをきかせた酢みそやポンズで食べます。

まぶりずし・まぶりめし
 千葉県の九十九里浜では、カタクチイワシの幼魚をジャミと言います。まぶりずしとはこのジャミを使ったナマナレズシの一種です。頭を取って一晩塩に漬けたジャミをさらに半日、酢に漬けます。酢漬けのジャミを刻みショウガや鷹の爪をまぶして桶に並べスシ飯を載せます。これを繰り返して上から重石をのせ、10日ほどたつと出来上がります。

  野村祐三氏の『漁師だけが食べている直伝浜料理』は、房総半島に伝わるカタクチイワシすしについて詳細な作り方を紹介しています。

エタリの塩辛
 長崎県雲仙市、橘湾の名産品です。イリコの加工に不向きな脂の多い大きなカタクチイワシを塩辛にしたものです。スローフード運動の国際本部が実施している「食の世界遺産」にもリストされた食品です。

[加工品]
しらす干し:稚魚のシラスを蒸したうえで生干しにしたものです。
ちりめんじゃこ:しらす干しを乾燥させたもの。
たたみいわし:しらす干しを板状にして乾燥させたもの。

ナンプラーニョクマムなどの漁醤の原材料になります。



アンチョビー
《学名》Engraulis encrasicolus 《英名》anchoby

 大西洋東部や北海、地中海などに分布します。なお、かつて南米ペルーの経済を支えたと言われ、世界最高の漁獲量を誇ったアンチョビーは正確にはアンチョベータ(《学名》Engraulis ringens)。現在は乱獲とエルニーニョ現象によって漁獲高が激減しています。

[加工品・料理]
アンチョビーのオイル漬け
 アンチョビーをオリーヴオイルに漬けたものです。

アンチョビーソース


サッパ
《学名》 Sardinella zunasi  《英名》 Japanese sardinella

 ニシン目ニシン科に属し、大きなもので体長20cmほど。ママカリ、キイワシなどとも呼ばれます。本州から東シナ海の沿岸部、主に西日本の内湾部、河口域に生息しています。生育場所や姿形が似ているコノシロと混同されることがありますが、コノシロは背びれの後ろにピンと伸びたえ鰭条(きじょう)――アンテナ――があるのに対し、サッパにはそれがありません。
 岡山の名物料理・ままかりずしに使われることで有名ですが、関東では小骨が多いためあまり好んで食べられていません。さっぱ属の仲間には、ほかにもオグロイワシやカタボシイワシがいます。

[特産地] 瀬戸内海

[旬] 年じゅう獲れますが、2〜4月が旬です。

[料理]
ままかり
 明治の文人・成島柳北は、岡山在住時に書いた日記『航薇日記』(1869年)で「その形、鰯に似て小なり。名をママカリといふ。その魚初めて漁船に上がる。漁人これを食ふに味美なり。一船の飯を喫し尽くし、ついに隣船より飯を借りて食ふ。故に名づけしと」と記しています。
 新鮮なさっぱから内臓を除去して塩に漬けて酢で締めたものでままかりずしなどに使います。焼きままかりは直火で焼いた後に二杯酢に浸けて、ご飯の上にのせてたべるものです。油で揚げて南蛮漬けにする場合もあります。




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